君とあたしのわずかな距離を、秒速十メートルで駆け抜ける
◇◇
「で?」
「……『で?』って?」
「何て返事したの」
「ああっと、それは……その……」
あたしはあははと笑って誤魔化してみるが、相変わらず美織の目は鋭くて。
その迫力に、笑みを作った表情筋が硬直した。
いま唯は席を外している。
放送部に所属している彼女は今日の放送の当番で、放送室にいるから。
あたしは、まるでイタズラを告白する子どものようにおずおずと切り出した。
昼休みの喧騒に紛れてしまいそうな小さな声で。
「きょ、協力するよって……」
亮太を真似て、頬をぽりぽりと掻いてみる。
直後、美織が大きなため息をついたのが分かった。
妙に居心地が悪い。視線は急降下。