君とあたしのわずかな距離を、秒速十メートルで駆け抜ける
わずか1分足らずで焼きそばパンを食べ終えた美織は、胃に流し込むように牛乳を一気に飲み干すと、目を怒らせながらあたしを指さした。
「だからって、もうちょいシャキッとしないとさぁ!」
「ごもっともでございます……」
「ところで、亮太の好きな人って誰なの?」
「えっ?」
美織とは対称的で冷静な奈々実の問いかけに、あたしは一瞬意味がわからなかった。
けれど直後、
「協力するってことは聞いたんだよね? うちのクラス?」
さらにツッこんだ追求をぶつけられて。
「……っ、」
平然を装うけれど、あたしの心は慌てふためいていた。
もちろん、唯の名前は出さないつもりだ。この4人の関係は崩したくないし……
いや、……違う。出したくないって言ったほうが正しいのかもしれない。
唯の名前は、絶対に出したくない。
それは吹けば飛ぶような、あたしのちゃっちなプライドの問題。