君とあたしのわずかな距離を、秒速十メートルで駆け抜ける







わずか1分足らずで焼きそばパンを食べ終えた美織は、胃に流し込むように牛乳を一気に飲み干すと、目を怒らせながらあたしを指さした。





「だからって、もうちょいシャキッとしないとさぁ!」


「ごもっともでございます……」



「ところで、亮太の好きな人って誰なの?」


「えっ?」





美織とは対称的で冷静な奈々実の問いかけに、あたしは一瞬意味がわからなかった。




けれど直後、





「協力するってことは聞いたんだよね? うちのクラス?」





さらにツッこんだ追求をぶつけられて。





「……っ、」





平然を装うけれど、あたしの心は慌てふためいていた。




もちろん、唯の名前は出さないつもりだ。この4人の関係は崩したくないし……





いや、……違う。出したくないって言ったほうが正しいのかもしれない。





唯の名前は、絶対に出したくない。




それは吹けば飛ぶような、あたしのちゃっちなプライドの問題。






< 48 / 56 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop