君とあたしのわずかな距離を、秒速十メートルで駆け抜ける
「てか鳥頭さんよ、そんな調子で補習終わんのかよ」
「鳥頭ぁ……!? いま、鳥頭って言った!」
「実際そーじゃんかよ。大抵の人間は、教科書と、授業を真面目に受けてさえいればヨユーで分かる問題だからな、それ。そんくらいでつまづいてるようじゃまた赤点とるんじゃねーの?」
「〜〜〜っ、うるっさいバカリョータ! あんたが邪魔するから集中できないのよ! とっとと帰れ!」
そう言ってやるが、ヤツは、気にしてなさそうにひらひらと手を振りながら教室を出て行った。
出会った時から、そうだった。
運動はできるが勉強はからっきしなあたしに対し、亮太は平気な顔で何でもソツなくこなしてみせる器用な男だった。
これで不細工だったら気にも留めないのだが、イケメンかどうかはともかく、それなりに異性からカッコいいとはやされるぐらいの顔面偏差値を持っているんだからいけ好かない。
「……黙っとけば格好いいのに」
盛って言えば、爽やか系男子。キリッとした顔で彫りが深い方だが、深すぎるわけでもない。
もったいない。終始悪巧みを企んでいるせいか、生意気ざかりの少年みたいな顔をしているし。
それに、あぁやってからかってくるような一言多い系男だ。
――とまあ、そんな亮太ではあるけれど、たま〜に女子の中でも好きモノがいて。
そういうマニアな人からだけは人気が高いらしい。
何故人気なのかはあたしの知るところではないけど。