君とあたしのわずかな距離を、秒速十メートルで駆け抜ける
亮太は、今、出入口の付近で仲間たちとご飯を食べている。
すぐにロックオンしてしまう自分が哀しい。
会話の内容はよく聞き取れないけど、相手を笑わせたり、話を聞いたり、そのポジションを場の空気に合わせてくるくる変えているようで。
亮太かつぶやいた瞬間拍子にどっと笑い声をあげ、盛り上がっている。
――中学の時からそうだった。
明るくて、バカみたいにリアクションが大きくて、終始くだらないことばかり言うのになんでかおかしくって、話し上手で、聞き上手で……
いつの間にかたくさんの人に囲まれているような、そんな人。
あたしは真っ赤になっているであろう頬を隠すように、やや俯き加減でお弁当の続きを食べる。
「「おゆってば健気すぎ……」」
心臓の音がうるさすぎて2人に聞こえやしないかと心配だったけど、2人は2人で何か小声で話しているようだった。
その時だ。
「あ、リョータじゃん!」
知らない女生徒の声が、彼の名前を呼ぶ。
胸がざわっと、した。