君とあたしのわずかな距離を、秒速十メートルで駆け抜ける













「……というわけなの。ほんっと、もう、昨日は最悪だったんだから。参っちゃうよね〜」





奈々実と唯と美織の安定4人、机をくっつけてお弁当を広げたお昼休み。




あたしはさっそく昨日の亮太について愚痴をこぼしていた。




この2年間、毎日毎日ちょっかい出されてる。本当もう、いい加減にしてって感じ。




頭の中には亮太の勝ち誇った笑みと憎たらしいことを言うあの声が浮かんできて。




あたしは机に置いてあったジュースのパックをかっさらうと、ストローを乱暴にブッ刺してジューッと勢いよく吸い上げた。






「にしても相変わらず仲いいねぇ、"おゆ"と亮太は。実はあんたらデキてんじゃない?」





前の席に座っていた美織が、にやにやと笑いながらそう言った。




飲んでいたジュースはそのせいで気管に入ってしまい、たまらずむせ込む。





「へ、変なこと言わないでよ! なんでよりによってバカリョータなんかと!」


「ほら、よく言うじゃん。オトコは好きな子ほどいじめたいとかさーぁ、嫌よ嫌よも好きのうちとか」


「なにそれ、意味わかんない」


「……まぁ、男縁のないおゆにはまだ大人な話だったかもね」





自分の発言に自分で納得するように何度も頷く美織。






『おゆ』とはあたしのあだ名だ。




緒川 由奈(おがわ ゆな)、苗字と名前の頭文字を取って、おゆ。






< 6 / 56 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop