君とあたしのわずかな距離を、秒速十メートルで駆け抜ける
「朝飯食った後さ〜、糞する順番に乗り遅れて超腹の調子がわり〜んだよな。こういう時兄弟多いとヤバイんだよ、まじで」
下品。かつ自己中心的な話に朝からうんざりするあたしの隣で、亮太は相変わらずわが道を爆走中だ。
あたしは周囲から寄せられる冷ややかな目に、そそくさと顔を伏せた。
駅が一緒のあたしと亮太は、時間が被れば登校も一緒になる。
けれど、遅刻ギリギリの亮太と早起きのあたしの時間が被ることなんて今までなかったのに。
だからだろうか。珍しさで亮太と一緒に登校しているけれど……。
まったく、なんでこんなヤツと足取りを合わせてしまったのか――と、つくづく後悔だ。
亮太といてもろくな目に遭わないのは経験上わかっていたのに。
なぜそんなことを忘れていたのだろう。今日はどうかしている。
「つーか、緒川大人しいな。悩み事か?」
自分が肩身の狭い思いをさせているとは、この男にはどうやら思いつかないらしい。
とはいえ、めんどくさがって無視していると一層うっとうしい結果になる。