授かり婚~月満チテ、恋ニナル~
先に準備を済ませエレベーターホールに向かって行く先輩たちに遅れまい、と、急いで外出用のトートバッグにお財布と携帯を移し替える。
そうして席を立ち、オフィスを出ようとしたところで……。
「うわっ」
「す、すみませんっ!」
タイミングが被ってしまい、まさに外から開けられようとしていたドアを、私が引いてしまった。
開いたドアの向こうで驚いた顔をしているのは、来栖さんだった。
「ご、ごめんなさいっ! 驚かせてしまいましたっ……」
慌てて頭を下げて謝ると、来栖さんは私の剣幕にきょとんとした目をして、口元を抑えてブブッと吹き出すように笑った。
「いやいや、そんな真剣に謝らなくても。タイミングが被っただけのことだし」
「は、はい、すみませ……」
「だから、謝るなって。ほんと、いつも真面目だな、佐倉って」
目を細めてクスクス笑う来栖さんが私に向けた『真面目』という言葉。
それはたいていの場合人を評価する時に使うものだろうけど、いつでもどこでもその言葉で表され育った私には、また違う意味に聞こえてしまう。
「す、すみません。ほんと、つまんない性格で……」
「なんでそうなる。褒めてるつもりだけど?」
私の反応にちょっと呆れたような声で、来栖さんが何度か瞬きをした。
けれど、すぐになにか思い出したかのように、「あ」と口を丸く開けて目を細める。
そうして席を立ち、オフィスを出ようとしたところで……。
「うわっ」
「す、すみませんっ!」
タイミングが被ってしまい、まさに外から開けられようとしていたドアを、私が引いてしまった。
開いたドアの向こうで驚いた顔をしているのは、来栖さんだった。
「ご、ごめんなさいっ! 驚かせてしまいましたっ……」
慌てて頭を下げて謝ると、来栖さんは私の剣幕にきょとんとした目をして、口元を抑えてブブッと吹き出すように笑った。
「いやいや、そんな真剣に謝らなくても。タイミングが被っただけのことだし」
「は、はい、すみませ……」
「だから、謝るなって。ほんと、いつも真面目だな、佐倉って」
目を細めてクスクス笑う来栖さんが私に向けた『真面目』という言葉。
それはたいていの場合人を評価する時に使うものだろうけど、いつでもどこでもその言葉で表され育った私には、また違う意味に聞こえてしまう。
「す、すみません。ほんと、つまんない性格で……」
「なんでそうなる。褒めてるつもりだけど?」
私の反応にちょっと呆れたような声で、来栖さんが何度か瞬きをした。
けれど、すぐになにか思い出したかのように、「あ」と口を丸く開けて目を細める。