不器用な二人はあまのじゃくの関係
いきなりファンタジーです。
トラブルが解決、そして、優梨と煌大くんがめでたくお付き合い!
あれから少し経ったけど私と遥太はなんの進展もありません。残念ながら……
もうすぐ夏休みだっていうのに!
あ、優梨と付き合ってからよく話すようになったから煌大くんって呼ぶようになりました!
そんな中、私にはひとつ悩み事が。
それはと言いますと、あれです。
見てください。
「大宮!!!」
元気そうなショートカットの童顔少女が運動神経良さそうな走り方で毎日毎日2組にやって来るのです。私のクラスの1組の子でも、遥太のクラスの2組でもないから何組だかはわからないけれど毎日毎日やって来るのです。
大事な事なのでもう一度。
毎日毎日やって来るのです!!!
遥太を見ると毎回いるのでよく見る。普段の生活では見ないけどリボンの色から同級生だということはわかる。
「はぁ。」
この間のデートと事件でちょっとは距離が縮まったかと思ったのに。
優梨に相談しようかなぁ…
「ため息なんてついてどうしたの?幸せ逃げますよー?」
「優梨ぃ…」
ナイスタイミング!
これからの幸せがもう一度戻ってくるように急いで息を大きく吸い込む。
よし!
「優梨、あのね…」
「なんでいきなりめっちゃ空気吸ったの?」
私が深刻な顔で話し始めようとしたのに優梨は引きぎみで空気が全く読めていない。
「もう!いいでしょなんでも!
そんなことより相談があるんだけどさ。」
「なに?あ、あれでしょ?アレ」
そう言って指さす優梨。
その先には童顔ショートカット美少女。(勝手に呼んでる)
エスパーですかあなたは……
でもばっちり正解。
「ちょっとヤキモチ妬いちゃうぅ。私の遥太に手出さないでよぉ!」
「ちょっとやめて!そんなんじゃないもん!」
全然私に似てない私の声真似をしながらバカにしてくる優梨。
ストレートに言ったらそうなんだろうけどそんなにひどい重さじゃないからね、優梨さん。
「ふーん。……あの子、バスケ部の子だよ。私と一緒。」
「あ、そうなんだ…」
「最近遥太とずっと一緒なんだよねー。部活ない日も一緒に練習しててさ。」
「な、なにそれ!?」
「まぁまぁ。遥太結構うまいから教えてもらってるらしいよ。」
「……そうなんだ。」
「なぁーに妬いてんのよ。でもこのまま何もしなかったらあそこくっついちゃうかもねー。」
「なっ!!」
「どうする?遥太振り向かせ作戦しちゃう?(もう両想いなんだけどね)」
「する!します!優梨先生!!!」
「よーし。じゃあまず最近全然話してないよね?」
ギクッ
「話しかけに行こっかー♪杏奈ちゃん!」
「え!今!?今はあの童顔ショートカット美少女が…」
「ぷっ!なにそのネーミングセンス(笑)吉川 葉月(よしかわ はづき)だよ、名前。」
「あ、吉川さんっていうんだ」
「はい!行きますよー!」
「待ってくださいせんせーい…」
心の準備が全くできていない私に関係なくずんずん進んで行ってしまう優梨先生。
行ってどうすればいいんですかぁ……
「遥太!ほれ、杏奈だよ!」
「ちょっ!まっ!わぁっ!」
私の前に立っていた優梨は私の後ろにまわり、何をするかと思えばいきなり背中を押してきたのだ。案の定、遥太はびっくりしていてなにも言葉を発しない。
吉川さんも「いいところに来ないでよ」といった顔をしている。
「あ、えと……その………本日は晴天なり…あはは」
バカバカバカ!ほんとにバカ!なにわけわかんないこと言ってんのよ私!晴天だけどさ!
ワタワタしている私に呆れた優梨は助けに入ってくれる。
「杏奈が今日、マンガ貸してほしいんだってさー。だから一緒に帰ってあげて?」
「あぁ…今日は葉月と練習するから、勝手に取ってっていいよ!」
グサッ
私が積極的に遥太にアピールしてなかったからきっと遥太は吉川さんのこと好きになっちゃったんだ…
最初から私のこと好きだったわけじゃないけどショック。
「チッ」
え、優梨先生?今、チッて舌打ちされましたか?
「今日くらいいいじゃん?毎日やってるし、体休めないで怪我したら迷惑だから今日はやるな。わかった?ふたりとも。」
「でも!アタシ、みんなより遅れてるから…」
「じゃあ、これからは私が教えてあげる。それでいいでしょ?」
「うん!ありがとう!」
少し不満そうな吉川さん。
「いいのか?葉月?」
「うん!優梨ちゃんすっごい上手で憧れだからうれしい!」
でも、自分には優梨との練習も必要だと思ったのか喜ぶ吉川さん。
あぁ、罪悪感。
吉川さんすっごくいい子じゃん。
純粋にバスケがうまくなりたくて遥太を頼ってただけなのに私ったら……
「やっぱりいいよ!勝手に取りに行くから!遥太もちゃんと教えてあげるんだよ!じゃあ!」
自分が自分で情けなくなって、もう自分最低。
それに、遥太と吉川さんの間に入れる隙なんてない。遅かった。
最低な自分に涙が出てきて私は逃げ出した。