不器用な二人はあまのじゃくの関係
ピンポーン
「はーい。」
家の中からチャイムへの返事が聞こえる。
杏奈の声だ。
「はーい、って遥太!?」
「よぉ。」
俺は部活終わりに杏奈の家に来た。隣だけど。
「ちょうどいいところに!入って!」
「うお!」
グイッと腕を引かれて家の中に連れていかれる。そして「はい!」と持たせられたのはスリッパ。これはもしかして……
「お父さんが帰ってきてなくて、やっつけられる人がいなくて困ってたの!助けて遥太!」
杏奈が指さす先にはG。
やっぱり。
叩くのはかわいそうだから俺はスリッパの足裏に乗せて急いで窓の外に逃がす。
「さっすが遥太くんね!あ、ご飯は?」
「まだです。」
「あら、じゃあ、食べてってちょうだいよ!」
「そんなわけには…「座って座って!あ、まずは手洗いうがいね♪」
晴美さんは一日中どの時間でもこのテンションなのか。若いな。
とりあえず母さんに連絡するか。
ピロン
《わかったわ〜!楽しんでらっしゃい》
いや、いいのかよ!
まぁ仲いいからな。
「なんでうちきたの?」
「あ、夏祭りのことなんだけど。」
「練習試合なんだってね?煌大くんに聞いたー」
「そうなんだけど、その後、俺の部屋来いよ。」
言い方がエロくて自分で言ってて恥ずかしくなる。
「へっ?」
そりゃそーなるわな。
「花火見ようぜ」
よかった。
ちゃんと言えた。
「それ、私も言おうとしてた。」
「まじで!」
「うん、なんか嬉しいね、えへへ」
杏奈、かわいい、かわいすぎる…
いつからこんなかわいくなったんだよ。
その後はいつも通り憎まれ口を言い合って楽しい夕飯となった。
「また来てね。あと、花火楽しみにしてる」
恥ずかしそうにうつむく杏奈はかわいくてかわいくてキュン死しそうだ。
「またな」
そう言って俺は家に帰った。
夏祭りに行けないのは残念だけど杏奈と花火を見る約束ができたからいっか。
楽しみだ。