不器用な二人はあまのじゃくの関係
「っしゃあ!」
「クッソ!また負けたー。」
「ね?言ったでしょ?全勝してやるって♪」
リズムゲームにカーレース、戦闘ゲームも全て勝った!
昔からゲームで負けることは一度もなかった。
私って実はゲームの王様なのかも♪
女王だわ!女の子だし!
「あー、杏奈には勝てねぇなー。」
「そんなのわかりきってることでしょ?」
「次は勝つ!よし!もう一回だ……」
ヒューッドンッドンッ
「あ、花火」
「忘れてたな、ハハッ」
「ほんと!」
花火が始まるとふたりは無言で見ていた。
ふと遥太の方を向くと少し微笑んでいた。
その横顔はなにを思っているのだろうか。
考えていること、していること、なんでも共有できるようになったら楽なのに。そうしたら好きって言わなくても伝わるのに。
「……杏奈」
「ふぇ!?コホンッ…なによ?」
横顔を見つめているといきなり遥太が話しかけてきたので変な声が出てしまった。
それを隠すように冷静な声で返事をする。
「花火、きれいだな。」
「そうね」
「今日は初めてふたりで見たな。」
「なによ、改まってそんなこと言わないでよ」
「今までで一番きれいだ」
ドキッ
なによ、それ。
どういう意味なの?
「杏奈…」
私の方を向き直ってじっと目を見つめる遥太。
花火の灯りがまばらに当たって遥太の顔が優しく照らされる。
きっと私の顔も。
「杏奈…俺は杏奈が好きだ。」
ドキンッ
「幼なじみとしてじゃなくて、女の子として。」
「うそ……」
遥太が私のこと……好き?!
そうだったらいいなって期待したときもあったけど、本当に好きなんて………
嬉しいよ、嬉しすぎるよ。
「バカ遥太。なんで先に言うのよ。」
嬉しくて嬉しくて泣きそうなくらい嬉しいくせに『バカ』なんて可愛くないセリフがすべり出る。
でも、
「私の方がもっと好きよ。」
ギュウっ
私がそう言うと遥太は思いっきり私を抱きしめた。
力が強くて苦しいけど、幸せが溢れてそんなの気にならない。
好きが伝わるってこんなに幸せなんだ。
私からスッと離れた遥太。
「杏奈、俺と付き合ってください。」
「はい…」
私たちはどちらともなくキスをした。
好きな人とのキスってこんな幸せなんだ。
唇を離したら寂しさよりも恥ずかしさが勝って顔を見れないだろう。
でもそれすらも幸せに感じてしまう。
これからもずっと遥太と幸せを共有していきたい。