かわいい


「「「本郷!?」」」


立候補していたのは、硬派な男子で有名な本郷武人くんだった。

整った顔立ちとは裏腹に無口で、話しているところをあまり見たことがない。
しかし、そんなクールさからか女子からの人気も熱い。


そんな彼が自ら文化委員に立候補するとは、私はもちろん、クラス中、担任までもが驚いていた。



「おーおーどうした本郷!いきなり立候補なんて!」


ムードメーカーの鶴田くんが弄るようにそう言うと、本郷くんは挙げていた手をおろし、腕を組んで一言


「俺なら恐くない。」


低い声でそう言った。


あまり聞いたことがなかった本郷くんの声に女子達はざわつき始め、顔を赤く染める子もいた。



そして、私でさえ、その本郷くんの言葉に顔を赤く染めてしまった。


瑞樹以外で初めて、私のお兄ちゃんを恐くないと言ったのだ。




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