真愛




「そんな格好でドア開けるんじゃねぇ。発情したバカ犬に食われでもしたらどうする」

「バカ犬って俺のこと!?ねぇ、そうなの!?」

「黙れ」

キャンキャンと吠えていた楽も尊の威圧に耐えきれなかったらしく、すぐさま黙った。

楽でさえ怖いと思うんだから、私の恐怖心は比べ物にならない。

「服が見当たらなかったし、ここに来れるのは楽か組の関係者くらいでしょ?それに私に手を出すとどうなるか分かってるのに手を出す人はいないと思ったんだけど…違う?」

「…違わねぇ。けどそんな格好で不用心にドア開けんな」

そういって自分の胸に私を閉じ込める。

ごめんね、とだけ伝えて尊の背中に手を回す。

「あのー、お取り込み中失礼致しますー。早く会社に行かなきゃ仕事が溜まる一方なんですけど!?」

「空気読めバカ犬」

「バ、バカ…!?蒼聖に俺がどやされるじゃんー!!」

楽によると、急な仕事が入ったらしく、尊に電話したけどとらなかったみたい。

だから迎えに来たらしい。

2人が言い合いしている間に、クローゼットからスーツ一式を持って尊の元へ。

着替えるようにいうと、ブツブツいいながら着替えだした。

連れていくと駄々をこねる尊をなだめて会社に行くように説得する。

これが私の毎日の日課。

「すぐ帰る。外出する時は…」

「わかってる。雪乃と外出、でしょ?安心して行ってらっしゃい」

捨てられた子犬のような目をしながらマンションを出て行った。

組では無表情な尊が私の前だと表情がコロコロ変わる。

みんなは笑顔以外はあまり見分けがつかないらしい。

結構わかりやすいと思うんだけどな〜…。










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