真愛
椿さんと雪乃の元へ戻ると、不安気な表情をした2人の姿があった。
「奈々!よかった、無事で…」
私を見るなり胸をホッとなで下ろす雪乃。
でも椿さんは険しい表情のまま。
何かあったことを察してるのだろう。
ちゃんと話さなくちゃいけない。
それはわかってるの。
けどもし…尊と引き剥がされてしまったら?
椿さんや司さんはそんなことしないってわかっててももしもの事を考えてしまって私は言い出せなかった。
「奈々…」
不安気な表情で私の名を呼ぶ椿さん。
「…後日、お話します。今この場は、祝いの席でもあるんですし、こんな話は本家でゆっくりと説明します」
「…そう、ね。とりあえず、無事で何より」
ふわりと笑って私を抱きしめる。
その温かさに凄く安心して、涙が出そうになるけれど、尊が心配しちゃうわよね。
「なに奈々に抱きついてんだ」
「あ、尊!」
私が名前を呼ぶと、優しく微笑みかけてくれる。
「ちょっと奈々借りる。もう少しで大々的にコイツ紹介するし」
「あ、その前にトイレ行ってもいい?」
「おう、行ってこい。早く戻ってこいよ」
わかった、とだけ伝えトイレへ急ぐ。