真愛



泣きそうな顔を少しでも抑えたかったから。

トイレの手洗い台の方にもたれ掛かり、ふうと大きく深呼吸。

今日はめでたい席でもあるんだし、楽しまなきゃ。

メイクは崩れてない、よかった。

さて戻ろうか、と出入口に足を向けると、そこにはきらびやかなドレスに身を包んだ女の子が3人いた。

表情で一瞬にして感じ取った。

この人達、私を良く思ってない人だ。

表情から嫉妬の感情が見受けられる。

大方、私が1人でトイレに来たのを見計らい、嫌味か何かをいいに来たんだろうな。

「ねぇ、アンタ尊さんの何なの?」

センターに立つ1番可愛い子が口を開く。

うーん、そんな事をいわれても恋人としかいいようがないような?

「恋人です」

簡潔にそれだけを述べる。

すると3人が一斉に笑い出す。

私何か面白いことでもいったかな?

「アンタがぁ〜、尊さんの恋人なわけないでしょぉ〜?」

右に立つカワイイ系の女の子が馬鹿にした口調でいう。

続けて左に立つ女の子も馬鹿にしたような口調で私に噛み付いてくる。

「アンタみたいなブスで体型も悪いデブスに尊さんが本気になるわけないっしょw」

そういってゲラゲラ笑った。

その態度にちょっとイラついて笑顔を作って返した。

「付き合うことに外見なんて関係ないですよ?大事なのはその人の中身、振る舞いや常識を知っているかです。まぁ、あなた方のような常識知らずなんか、尊の足元にも及びませんね」

ニッコリ笑っていうと、3人共顔をヒクヒクさせる。

それを無視し、私はなおも続ける。

「それに、私の心はその程度では折れませんよ?私の心を折りたいならもう少し酷いこといってもらわなきゃ」

ふふ、と笑うと3人は力なく座り込んだ。

この程度なら最初から喧嘩売らなきゃいいのに。

そう思いながらトイレを出ると、そこには尊の姿があった。

いつものようにくっくっく、と笑っている。

またバカにするよ、この人は。

「やっぱりお前肝がすわってんな」

「あら、元々私はこんな性格よ。それにあの人達他の組の方の娘さんとかでしょ?あんなに口弱くて大丈夫なの?」

「知らね。他の組が潰れようが潰れまいが俺には関係ねぇな」

そういってふっと笑った。

まぁ、弱い組は潰されるのがオチ何だろうけど。

はーあ、もう少し骨のある人かと思ったんだけど、勘違いだったみたい。

尊に連れられ、歩いていくと大きな舞台の横に司さんの姿があった。

ついでに楽と蒼聖さんの姿も。





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