真愛
「今日はわざわざこんなくだらねぇパーティーに来てくれて感謝している。今日は大事な話があってここに立っている。噂を耳にしてる奴もいるだろうが、改めて発表する」
そういって私に微笑みかけ、言葉を紡ぐ。
「俺は横にいるコイツと婚約をした。ほら、お前からも」
マイクを渡し、早くと急かしてくる尊。
待って、私も喋るの?え?
何話すとか考えてなかった!!
頭をフル回転させ、話すことを考える。
「ご紹介に預かりました、尊と婚約しています。初瀬 奈々と申します。至らない所も御座いますが、何卒よろしくお願い申し上げます」
それだけいって尊にマイクを返す。
自分では案外上手くできた方なんだけど、どうなんだろ。
一生懸命絞り出したんだけど、失礼じゃなかったかしら。
「コイツは俺が見つけた唯一の女だ。コイツ以外俺は欲しくもねぇ。だからまとわりついてくる女、目障りだからもう近づくな。コイツに手を出した場合はそれ相応の罰が待ってると思え。俺はコイツを生涯愛する。邪魔する奴は…潰す」
いい終えると同時に鋭い殺気を放つ。
一瞬で会場が凍りついたのはいうまでもない。
しばらくして、会場から割れんばかりの歓声と拍手が上がった。
やっと1人の女に留まるか!
猛獣使いが現れて安心だ、と笑う人もちらほら。
うん、やっぱりこの世界の人達ってみんながみんな悪い人なんかじゃないよ。
こうやって祝ってくれる人もいる。
何だかそれが嬉しくて、自然と頬が緩む。
認めてくれた、ってことでいいのかな?
尊はいいたいことをいい終えるとすぐに私を連れ、壇上から降りた。
「はー…緊張した…」
「まさか突然マイク渡されるなんて思ってもみなかったんじゃない?」
ケラケラと笑う楽にチョップを食らわせて尊の後ろに隠れる。
卑怯だ、なんて喚く楽だけどそんなの無視。
楽が喚くのは日常茶飯事だしね。