真愛




「なに!?検査は!?したの!?」

私の肩を掴み、激しく揺さぶる雪乃。

肩が取れちゃいそう。

「1人じゃ怖くてまだ出来てない。検査薬買いに行くことすら怖くて」

「行くよ!今すぐ!下に護衛の人いるから!」

私の手を強引に取り、足早に車へ乗り込む。

エントランスにいた組の方には何事かと凝視されたけど。

車に乗り込むなりドラッグストア、とだけ告げて車を走らせる。

雪乃、手馴れてるよね。

移動中も気分悪くない?どこか違和感とかない?と私の体を気遣ってくれる。

自分のことのように心配してくれる雪乃に笑みがこぼれる。

しばらくして近場のドラッグストアに到着。

すぐに検査薬を購入して家に帰り、トイレに籠る。

雪乃が気を利かせて護衛の方には話を通して、尊に黙ってくれることになった。

かという私は検査薬とにらめっこ。

いざやるとなると手が震えてなかなかできない。

ノックの音が響き、大丈夫?と声を掛けてくれる。

大丈夫、とだけ答え覚悟を決めて検査をした。

しばらく目を閉じ、ゆっくりと目を開ける。

「う、そ………」


結果は陽性だった。

つまり、私のお腹には命が宿っているということ。

2回検査したけど、結果は同じだった。

トイレから出ると、すぐそばで雪乃が不安気な表情で待っていた。

「…どうだった?」

「……妊娠、してた」

そう告げると、私を強く抱き締めてくれた。

そっか、そっかぁ、と呟きながら涙を流している雪乃。

雪乃が泣き止んだ後、2人でソファに座り一言も喋らず沈黙が続く。

長い沈黙を破ったのは雪乃だった。

「尊さんに、いうの?」

「…うん、いわなきゃだよ。喜んでくれるかわからないけど」

確かに尊の愛情は伝わってるし、本当に幸せ。

けれど喜んでくれるかは不安になるもので。

もしも、堕ろせなんていわれたら?

いうはずないけれど、何か理由があって喜ばれないかもしれない。

でも、いわなきゃいけないのが現実で。





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