真愛
「とりあえず、さ…連絡してみたら?」
「…うん」
携帯を取り出し、電話だと仕事の邪魔になる気がしてメールすることにした。
話があるから、早く帰ってきてね。とだけ送った。
するとすぐに私の携帯が鳴る。
この着信音は尊かな。
少しためらって3コール目で電話に出た。
「…もしもし?」
『どうした?メール読んだけど。話があるなら電話しろ。気になって仕事できない』
ちょっと不機嫌そうにいう尊。
たったそれだけのことでも私の不安は膨らむ。
「うん、電話じゃ長くなるし大事な話だから…帰ってから話したい」
少しの沈黙のあとわかった、すぐ帰るといってくれた。
それじゃあとからね、と電話を切り深い溜息を吐く。
緊張、した…。
尊との電話でこんなに緊張したのは初めてかもしれない。
1人だと不安だ、ということで尊が帰宅するまで雪乃に家にいてもらうことにした。
気を遣ってなのか妊娠の事には一切触れず、他愛もない話をし合った。
最近楽のシスコンが酷くなった、だとか新しく出来たケーキバイキングのお店に行きたいだとか。
きっと少しでも私を元気づけようとしてくれたんだろうな。
おかげで尊が帰って来るまで深く考えずに済んだ。
2人で他愛もない話をしながら笑い合っていると、玄関のドアが開いた。