真愛




「食べないのか?」

少し曇った表情で私に問う尊。

お腹空いてないの、とだけ答えて向かいの席に座る。

私はただ、尊がご飯を食べているのを眺める。

うん、今日も上出来。

美味しそうに食べてくれるだけで作りがいがある。

私は食欲なんてわかないけれど。

あっという間に尊はご飯を食べ終え、お風呂へ。

その間に私は洗い物を済ませる。

しばらくソファに座ってボーッとしていると、石鹸の香りと共に尊が後ろから抱き締めてきた。

「わ、びっくりした…。服きなよ、服を」

尊は当たり前かのように上半身裸。

男の色気とかいうものがムンムンする。

仕方なさそうに寝室にあるクローゼットから洋服を引っ張り出し身につける。

そして何もいわずに私の隣へ座る。

変に緊張してしまって、お互いに無言が続く。

「話って何だ」

その声にビクッと反応し、ゆっくり尊の方に顔を向ける。

いつもとは違う、真剣な表情。

でもどこか悲しげな瞳をしている。

どうしてそんな顔をしているの…?

もしかして、子供がいることはもう既に察してて、そんな顔を?

それとも違うことを考えてるの…?

………わからないよ。






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