真愛
「別れたいわけじゃ、なさそうだな」
悲しさを瞳の奥に隠しながら、それでいて愛おしそうに私の頬に指を滑らせる。
尊のその行動にかけ巡らせた考えも一瞬で消え去る。
私はただ、口を開けて尊を見ることしか出来ない。
名前を呼びたくても声がつっかえて言葉にならない。
「どうしたんだ?どうしてお前はそんなに悲しげな顔をする?」
はっ、と息をのみとにかく自分を落ち着かせようと深呼吸を試みる。
しばらく大きく息を吸ったり吐いたりを繰り返し呼吸を整える。
「ち、がう、の…」
その言葉に尊は首を少し傾げる。
何がだ?とでもいいたいかのように。
私は頬に伝う尊の手を握り、言葉を繰り返す。
「違う、の。誕生会の前に私の様子がおかしかったのは…尊へのプレゼント代を貯めたくて」
「…プレゼント代?」
心底不思議そうな顔をして顔を顰める。
そりゃ尊から見れば私が家から出てるような様子はなく、ただ変だっただけ。
家事は今まで通りこなしてたし、ご飯だっていつも通り用意出来てた。
家を空けてバイトしてたなんて、夢にも思わないだろうね。
「瑠依…ほら、聖藍の幹部の子いたでしょ?私を倉庫で守ろうとしてくれた子。雪乃といる時に瑠依に会ってね?」
聖藍、という単語が飛び出すだけで心底嫌そうに顔を顰める。
尊は今でもまだ許せてないみたい。
まぁ、私も心なしかみんなとはギクシャクしてる気はする。
けどそんな顔しないでよ。