真愛
「母親から投げつけられたお金じゃ、なんか…尊が汚れちゃう気がしたの。かといって生活費から出すのはおかしいし…。自分で頑張って働いたお金なら、胸はって渡せると、思った…から…」
俯きがちにいうと、尊の腕の中に閉じ込められた。
柑橘系の爽やかな香りが鼻をくすぐる。
「勘違いしてすまなかった。たかが俺のために聖藍なんかに近づくのはいただけねぇけど…ありがとうな」
そういうと更に抱き締める力を強めた。
その温もりに安堵して、胸に顔を埋める。
私の行動が裏目に出る時だって、ある。
それで尊に心配かけてちゃ元も子もないな。
ちょっと反省しつつも、ここまで気にかけてくれてたのに嬉しさが込み上げる。
「それで…最近様子がおかしいのは?」
体を少し離して顔を覗き込み聞いてくる。
やっぱり聞かれる、よね…。
でも、大丈夫、大丈夫。
こんなに気にしてくれてる尊が反対するはずない。
自分を落ち着かせるように言い聞かせて、呼吸を整える。
「……た、の」
息が詰まってハッキリ声が出なかった。
当たり前聞き取れなかった尊は首を傾げている。
もうひと息ついてから、覚悟を決めて尊の目を見ていった。
「妊娠、した…の」
大きく目を見開き、固まる尊。
どれくらいそのままだったのか。
他から見ればたったの数秒だったと思う。
けど私には何分、何時間にも感じた。
尊?と名前を呼ぶと、ハッと我に返って私を抱きしめた。
「本当、なのか」
「え?」
「妊娠、したのか」
「あ、うん…病院はまだだけど、さっき検査薬でやってみた…」