真愛



「くそっ…!!!」

俺はベッドを殴り、なんとか怒りを抑えようとする。

何だ、何が起こっている?

奈々が紅瀬の内通者なわけはない。

だとするとあのパーティーの日に何かあったと考えるのが妥当だ。

そして姿を消したのが、俺が撃たれた次の日である今日。

という事は俺が撃たれたあの日、奈々が姿を消す決め手になったのだろう。

恐らく、奈々は何らかの脅しを受けて姿を消した。

他人思いなアイツのことだ、俺らを餌に脅されていたんだろう。

「あのクズ…。尊、綾牙は何か企んでるよ」

「それは間違いないな。蒼聖、襲撃の件は調べたか?」

「組員に聞き込みをすると、見慣れない車を見かけたとの情報が。特徴からするに紅瀬が所有する車両です。それと、あの日のことを奈々さんにお聞きすると様子がおかしかったですね」

「って事は何かの理由で脅されてたのかもね」

「間違いないでしょうね。聞き込みをした時の奈々さんは、とても思い詰めたような顔をしていましたから」

これでほぼ確定で紅瀬の仕業だとわかった。

紅瀬には奈々を脅し、手に入れる必要があったというわけか。

「よくもまぁ、尊を敵に回そうなんて考えたな…アイツは」

「…お前ら、奈々を取り返すぞ」

「「了解しました、若頭」」




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