真愛
「…ありがとう」
私はプリクラを大切に握りしめた。
「ふふ、どーいたしまして!さ、帰ろっか!」
満足気に微笑んで私と一緒に店を出る。
繁華街へ入った時、見覚えのある後ろ姿を見つけた。
やだ、待って。
無意識に足が止まる。
「なーつん?どうしたの?」
雪乃は不思議そうに振り返る。
その男が声に反応したのか、ゆっくりと振り返る。
やだ、やめて。
こっちを見ないで。
あの日のことが鮮明にフラッシュバックする。
「お前…」
私を見るなり、憎しみへと色を変える瞳。
銀髪でスラッとした体。
整った顔立ち。
それは紛れもない……
「りゅ、う……」
私の……愛した人。
気付いたら体が反射的に動いていた。
瀧とは逆の方向へと走る。
「おい、待て!!」
いくつもの路地裏を抜けて、人とぶつかっても走り続ける。
捕まったら最後。
私はまた、あの瞳を向けられる。
体が震える。
声が出ない、息が続かない。
まるで暗闇に突き落とされたような感覚に陥る。
私が路地裏を抜けようとした時、そこには男が立っていた。
「こんなとこにいたのかよ、裏切り者」
私を軽蔑した目で見つめる蓮。
その後ろには颯の姿。
同じように私を汚いものでも見るかのように睨んでいる。
後ろへ逃げようと振り向くも、そこには薄い笑みを浮かべた悠月。
そして悲しげな瞳で私を見つめる瑠依。
「瀧さんから連絡を頂いたときは驚きましたよ。もう死んだものと思っていました」
足がガクガクと震えて力が入らない。
立つのもやっと。
過呼吸に陥りそうになるも、何とか抑える。
「何の、用?わざわざ関わらないでくれる?」
強がって口調を強くして話す。
じゃなきゃ、嘘がバレてしまう。
「お前がこの街から消えねぇ限りは痛めつけるつもりだけど?」
平然とした顔でいう颯。
もうあの頃の優しかった颯の姿はどこにもない。
「まぁ、死んでくれた方が嬉しいんだけどな。お前みたいな裏切り者!」
「貴女を殺した罪で捕まるなんて死んでも嫌なので早く死んでくれませんか?」