真愛
「嫌いなヤツに言われて死ぬとかバカじゃないの?」
平然を装う。
ここで精神を崩すわけにはいかない。
「まだわからないんですか。相当なドMなんですかね」
そしてみぞおちに蹴りをいれる。
吐き気を抑えながら壁にもたれる。
キッと睨むと、フルで殴られた。
口の端から血が流れる。
そんな傷よりも、心の方がよっぽど痛かった。
もう、あの日になんか戻れやしない。
みんなで無邪気に笑いあっていた…あの日に。
瞼の奥に滲む何か。
涙なんて流すもんか。
ここで泣いたって何も変わらない。
だから……ギリギリまで耐えるんだ。
今、全てを話したって信じてもらえない。
それに、もし動揺して、そこにkudanがきたら?
…間違いなく聖藍はやられる。
みんなのために…耐えなきゃ。
殴られ、蹴られ、それでも私は根を上げない。
それが面白くなかったのか、悠月が睨みつける。
「何で泣かないんです?泣き叫んでくれたら、もっと楽しいのに」
次の瞬間、お腹に鋭い痛みが走った。
ゆっくりとそこに視線を向けると、目の前は赤に染まっていた。
ーーーー刺されたの…?
「あ……ぐ、あ…いた、い……!!!!!」
「悠月っっ!!!いくらなんでもっ……!!!」