真愛



「奈々っっ…!!」

駆け寄って女を抱き締める雪乃。

どうやらコイツが親友らしい。

「酷い姿だ…とりあえず車に運ぼう」

俺は楽が動く前に女を優しく抱き抱え、車へ運んだ。

綺麗だ、そう思った時にはもう体が動いていた。

「ここらで一番近い病院に連れていこう」

「本家へ迎え」

「え?」

間の抜けた声を出す雪乃。

まさか本家へと運ぶなんて思っていなかったんだろう。

それに、本家は組員以外の者は立ち入り禁止だしな。

「いいの?組員以外の立ち入りは禁止されてるよ?」

「構わねぇ。このナリで病院なんか行けるかよ。第一、コイツは雪乃の親友なんだろ。本家の方がコイツも安心だろ」

俺が許可したなら文句はないはずだしな。

了解、と呟き車は発進した。

俺はシャツを脱ぎ、刺されたところを押さえる。

致命傷にはなってねぇといいが…。

確認すると、まだ息はある。

刺された位置がまだ安全な位置だったのだろう。

「ねぇ、奈々……死なないよね?」

泣きながら俺に問う。

「大丈夫だ。信じろ」

こくんと頷き、女の手を強く握る雪乃。

本家につくなり、急いで女を運ぶ。

「茂(しげ)、コイツを診てくれ」

「おい、ひどい怪我じゃねェかィ。どれ」

茂は先代からいる久月組の専属の医者。

危険と隣り合わせの生活だからな。




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