真愛
「茂さん、奈々は……」
「大丈夫ですぜィ、雪乃ちゃん。傷は深ェが、命に別状はねェよ。安心しなさんな」
「よかった…」
ホッと胸を撫で下ろす。
目の前で死なれたら胸糞わりぃしな。
にしても、よく見ると綺麗な顔してんだな。
痣が痛々しいが、ほんとに綺麗だ。
「しばらくしたら起きるだろうよゥ」
「ありがとな、茂」
「いやァ、若の頼みだしなァ。それに、雪乃ちゃんの大事な人なんだろィ」
「うん、本当に……大切な人」
「また何かあったら呼んでくれィ」
そういって部屋を出ていった。
「着替えさせた方がいいんじゃない?汚れてるし」
「そうだね。じゃあ、2人はあっち向いてて!」
俺らに後ろを向くように指示する。
別にお前が着替えるんじゃねぇんだし、問題ないだろ。
「尊さん、別に問題ないだろとか思ったでしょ!女の子は恥ずかしいの!早く後ろ向いて!」
俺は仕方なく後ろを向く。
寝てる相手に恥ずかしさもへったくれも無いと思うんだが。
「えっ、何これ…!?」
振り向いてみると、女の体には痣の他に左肩に無数の根性焼きの痕があった。
少し前の傷か?
「まさかこれ……」
「聖藍、だろうな」
楽が呟くように言う。
コイツと聖藍の間に何があったんだ?
「雪乃、何か知ってる?」
楽が優しい口調で聞く。
「ううん、知らない…過去の事に触れるの、何だか気が引けて、ね……」
寂しい顔をして言う雪乃。
過去に縛られる苦しみを知っているからこそ、だな。
「そうか。なら、起きたら聞いてみるか」
「でも……」
「無理には聞かねぇよ」
きっとコイツの過去は重く苦しい。
何かを抱えていそうな、そんな気がする。
「ん……」
色々考えていると、女が目を覚ました。