真愛
「もうっ!なーつん大好きっ!」
瞳に涙を溜めて、きつく私を抱き締める。
私も負けじと雪乃をきつく抱き締める。
助けてくれてありがとう。
「似てる…」
楽さんがボソッと呟いたことには気付かなかった。
瞳の奥に悲しみを潜めながら。
「そういえば、なぜお前は路地にいた?」
「……追われてたんです」
「誰に?」
そう聞かれて私は口をつぐむ。
聖藍といえば、なぜ繋がっているかバレる。
でもいっそのこと……嫌われた方がいいのかも。
これからもきっと、私は追われる身。
雪乃やこの人たちを危ない目には合わせられない。
嫌われるなら…それでいいよ。もう。
今まで雪乃にはたくさん思い出もらった。
それで……充分でしょう?
「私は…聖藍の姫でした」
すると3人は驚いた顔をした。
「でも聖藍に姫なんか…」
「今は廃姫になったんです。私が最初で最後です」
「え、なんで廃姫になんか…」
「……私は―――」
ぽつりぽつりとあの日のことを語った。
あの夢のような日々を。
あの悪夢なような出来事を。
話を進めていくと、みんな顔を歪めた。
今でも鮮明に思い出す。
倉庫に立ち込める香り。
みんなの軽蔑した目。
言葉、様々なことが頭を駆け巡る。
話終える頃には、雪乃の顔は涙でぐしゃぐしゃ。
雪乃を慰めようと手を伸ばすと、その手は誰かに捕まれ、引き寄せられる。
その拍子に体のバランスを崩し、引き寄せられた方へ倒れ込む。