真愛
「楽、蒼聖(そうせい)にいって真実を拡散させろ。それと、聖藍にも証拠を送り付けてやれ」
「りょーかい。アイツらの慌てふためく姿…想像するだけでゾクゾクするね」
いたずらっ子のように笑う楽。
絶対的に回したくないと本能的に思った。
「真実を拡散するのは…まだ待ってほしい。お願い」
私はみんなに頭を下げる。
今いうわけにはいかないの。
「わかった。でも、時が満ちればいうからな」
「尊は甘いねぇ……」
楽がヤレヤレと頭を振る。
「やっと、会えたんだ。もうお前を離さねぇからな」
心底嬉しそうに笑う。
ん?やっと会えた?
「どこかで会ったっけ?」
「何度か、な。直接話してはないが。それにお前、繁華街では結構な有名人だぞ」
「それ、何で?私有名になった覚えないのに」
「毎晩、繁華街ほっつき歩いてたろ。“繁華街の蝶”って話題だ。久月組はここら辺一帯がシマだからな。情報はすぐ入る」
情報網のすごさに驚く。
知らないことなんてないんじゃないかってくらい。
「俺はずっと、お前を探してた。やっと会えた、奈々」
私を探してた?
何でこんなに有名な人が私を?
一般市民なのに。
その考えが尊にも伝わったのだろう。
すぐさまその疑問を解決してくれた。
「何回か繁華街で見かけてたんだ。といっても、お前は聖藍と歩いていたがな」
あ、そういえば。
よくみんなで繁華街に来てたっけ。
思い出す度に胸が痛くなる。
「俺の願いが叶った。もう離してやれねぇ」
少年のように無邪気に笑う尊。
こんなに純粋に私に愛を注いでくれる。
「そういえば雪乃はなんで組に?」
「…私、朝日奈 楽の妹なの」
「え!?そうなの!?いわれてみれば似てる…」
「親は違うけれど、ここで暮らしてるの。私の親も楽にぃの親も小さい頃に亡くなっちゃって」
そうなんだ…。
だからここで暮らしてる、ってこと。