真愛



極道だもんね。

色んな人から命狙われてそうだし。

こういう人たちはいつも死と隣り合わせっていうし。

「ん、ここだ」

カードキーを差し込んでドアを開ける。

そこにはほぼ物がないリビングが広がっていた。

あるのはテレビとテーブルと大きいソファ。

全て白と黒で揃えられている。

シンプルですごく好き。

リビングを過ぎ、奥へと進むと寝室があった。

普通のマンションの広さじゃないよね。

広すぎる。

一体何畳あるんだろ。

キングサイズのベッドしか置かれてないけどスペース余りすぎだし。

尊はその大きなベッドに私をゆっくり下ろした。

「傷、痛むよな」

悲しげな表情で刺された所に触れる。

まるで壊れ物を扱うように。

なんで尊がそんなに泣きそうな顔してるの?

「守ってやれなくて…すまなかった」

「尊のせいじゃない。だから責めないで」

私はゆっくり尊を撫でた。

そんな顔しないで。

「そういえば何で蝶?みんな蝶、蝶っていうし」

「お前のこと」

「へ?私?」

真顔でさらっというから、驚いた。

人間なんだけど。

蝶みたいに綺麗じゃないんだけど。

「俺から見りゃ、お前は手が届きそうで届かない存在だったんだよ。手を伸ばせば逃げてしまう、夜にさまよう蝶って意味だ」

「あー、あの頃は聖藍といたし、夜はよく繁華街だったしね」

遠くを見つめながらあの日を思い出す。

何をしていても、昨日のことのように思い出せる。




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