真愛
考えたくなくても考えちゃう。
困った頭だなーとかのんきに考える。
あの頃みたいに笑えるかな。
純粋に仲間を信じたあの頃のように。
「何考えてる?」
私の顔を覗き込み、無表情で聞いてくる。
そんなに澄んだ綺麗な目で見つめないで。
まるで全てを見透かされてるかのよう。
「過去のこと。でも、もういいの」
あの頃になんて、願っても戻れない。
楽しかった思い出には蓋をしよう。
ただ願うことは、みんなが幸せでいてくれることだけ。
それだけ、考えればいい。
シーツをキュッと握り締める。
何を考えてるのか読み取ったのか、私の手に自分の手を重ねる。
ゴツゴツ角張っていて、私の手とは全然違う。
人に対して恐怖しか抱かなかったのに、何でだろう。
尊の手は不思議と安心する。
まだ出会ったばっかりなのにね。
「俺から離れるなよ、奈々。過去からも未来に起こる嫌なことからも俺が守ってやる」
そういって、ふわりと笑った。
こんなに大切にされたのは初めてで戸惑う私。
どう反応したらいいのか。
「とりあえず、お前は俺に守られてろ。今日はもう疲れたろ?眠りにつくまでそばに居てやるから、もう寝ろ」
毛布をかけて、ベッドに腰掛ける。
尊はその言葉通り、私が眠りにつくまでそばに居て手を握ってくれた。
間もなく、私は深い眠りに落ちた。