真愛
消えない傷跡。
目を開けると、そこは倉庫だった。
いつもみんなといた、聖藍の倉庫。
中へ入ると、いつもと変わらずみんなが私に声をかける。
「あ、奈々さん!」
「もー、遅いっすよ奈々さん!」
「え?え?」
いつも通り、私に信頼と尊敬の眼差しを向ける下っ端くんたち。
あの頃と何も変わらない笑顔で。
その対応に戸惑っていると、奥から幹部のみんなが出てきた。
「あ、なっちゃーーんっ!!」
子犬のように私に抱きつく瑠依。
“なっちゃん”
それは私がまだ姫だった時、瑠依が呼んであだ名。
なっちゃん、なっちゃん、って毎日私を呼んでくれてたっけ。
「おっせーぞ、バカ!俺ら待ちくたびれたわー」
無邪気に笑う蓮の姿。
変わってなかった、あの頃と。
私を殴ってるあの時とはまるで別人。
「また道草をくっていたのでしょう?」
「ったく、お前はほんと猫みたいだな」
くすくすと笑う悠月と呆れた顔の颯。
何が…起こってるの?
あまりにもみんなの対応が普通すぎて戸惑う。
頭にハテナを浮かべていると、後ろから抱きしめられた。
いつも嗅いでたスカルプチャーの香り。
勢いよく後ろを振り向くと、変わらない瀧の姿。