真愛
「汗ふかないと風邪引くぞ」
そういいながらも嬉しそうに微笑む。
言葉と顔が一致してないから。
つっこむ気力もないので、とりあえずスルー。
なぜこんなに大切にしてくれるのかわからないけれど、それに救われてる。
「お前が起きるまでここにいるから、安心して眠れ」
じゃなきゃ傷も治らねぇだろ。
そういって私に毛布をかける。
尊のシャツの裾を握り締めたまま、私はゆっくりと目を閉じた。
「ん……」
ふと目を開けると、そこには見知らぬ天井。
あ、そっか、昨日から尊のとこに来たんだ。
いつものあのお店の天井じゃないから、違和感を感じてた。
ここにきて、悪い夢見て、尊が隣にいてくれて…。
横を見ると、隣でスヤスヤと眠る尊。
本当にずっと隣にいてくれたんだ…。
なんだか嬉しくて自然と頬が緩む。
可愛い奴め。
時間を確認するとまだ朝の6時過ぎ。
お礼にご飯でも作ろうかな。
そう思って起こさないようにゆっくり冷蔵庫まで移動する。
開けてびっくり、中には何も入ってなかった。
「うーーん、ビールしか入ってないってどういうこと?」
ほぼ空っぽ。
仕方ないから財布を持ってエレベーターでエントランスへ向かう。
受付にも誰もいないし、人気もない。
とりあえず、近くにスーパーを見つけたのでそこで適当に買い物をする。
あの人に投げつけられたお金もあることだし、少し多く買っちゃったけどいいよね。
餓死して葬式やらなんやらでお金を取られるのはごめんだと毎日お金を投げつけられてたっけ。
今思うとほんとにろくな親じゃないよね。
何のために私を生んだんだろ。
ふと疑問が浮かぶ。
私のお家は、割とお金がある方だった。
片親で、いつもお家には違う男。
母親が色んな男を取っかえ引っ変えしてたから。
どれもみんな、お金がある男。
お家のお金のほとんどは男に貢がせたお金。
そんなお金で何か買っても別に嬉しくない。
変な環境で育ったな〜とか考えてたら、いつの間にかエントランスに到着。
「あ。カードキー」
昨日、ドアはカードキーで開けていたことを思い出す。
これじゃ中に入れない。
運が悪いことに昨日の受付の人もいないし。
どうしたものかと考えていると、息を切らした尊が現れた。