真愛
「うわっ、朝ごはん!?尊が朝から飯食ってるの初めて見た!」
ケラケラ笑って楽がいう。
朝ごはん食べない人なんだ。
「いいなぁ、おいしそう」
「楽も食べる?」
「いいの!?」
キラキラした笑顔。
わー、少年みたい。
「いいわけねぇだろ」
「ええーーっ!?ケチ……」
「いいじゃない、はい楽の分」
テーブルに運ぶとご飯に飛びつく楽。
そんなに嬉しかったのかな。
「んーーーーっ!おいしいっ!」
全部焼いただけなんだけどね。
美味しいとかより素材がよかったんじゃないかな。
そう思ったのは胸にしまっておこう。
「あ、そういやさ。奈々ちゃんは尊が仕事行ってる間どうするの?」
「ここに引きこもり」
「いや連れて行く」
私の言葉を食い気味にいう。
いや、仕事場に連れて行くようなあれでもないでしょ。
「いい。ここで留守番する」
「聖藍が乗り込んできたらどうするんだ」
「ここ、セキリュティ万全なのに?」
そういうと強気な尊が黙った。
その向かいで楽が肩を揺らして笑いをこらえている。
「み、尊が…w 論破されてる……w」
「おい、笑うんじゃねぇ…」
尊が睨んでも変わらず笑う。
ある意味、楽のメンタルって鋼よね。
普通ならあの顔で睨まれたら固まるレベル。
きっと慣れなんだろうね。
「ここにいれば安心だし、危険なんてないよ」
「…連れて行きたい」
「だめ」
会話だけ聞いたら、ペットを学校に連れて行くって駄々こねる子供と母親だからね。
私が断ったせいか、尊はしょんぼりしている。
そんな可愛い顔してもダメなものはダメ。
「早く仕事、行きなよ?」
「…すぐ終わらせて帰る」
そう言い残して楽と仕事へ向かって行った。
2人のいなくなった部屋は、何だか寂しいような。
うーん、でもくつろげるって考えればいいのか。