真愛



「うわっ、朝ごはん!?尊が朝から飯食ってるの初めて見た!」

ケラケラ笑って楽がいう。

朝ごはん食べない人なんだ。

「いいなぁ、おいしそう」

「楽も食べる?」

「いいの!?」

キラキラした笑顔。

わー、少年みたい。

「いいわけねぇだろ」

「ええーーっ!?ケチ……」

「いいじゃない、はい楽の分」

テーブルに運ぶとご飯に飛びつく楽。

そんなに嬉しかったのかな。

「んーーーーっ!おいしいっ!」

全部焼いただけなんだけどね。

美味しいとかより素材がよかったんじゃないかな。

そう思ったのは胸にしまっておこう。

「あ、そういやさ。奈々ちゃんは尊が仕事行ってる間どうするの?」

「ここに引きこもり」

「いや連れて行く」

私の言葉を食い気味にいう。

いや、仕事場に連れて行くようなあれでもないでしょ。

「いい。ここで留守番する」

「聖藍が乗り込んできたらどうするんだ」

「ここ、セキリュティ万全なのに?」

そういうと強気な尊が黙った。

その向かいで楽が肩を揺らして笑いをこらえている。

「み、尊が…w 論破されてる……w」

「おい、笑うんじゃねぇ…」

尊が睨んでも変わらず笑う。

ある意味、楽のメンタルって鋼よね。

普通ならあの顔で睨まれたら固まるレベル。

きっと慣れなんだろうね。

「ここにいれば安心だし、危険なんてないよ」

「…連れて行きたい」

「だめ」

会話だけ聞いたら、ペットを学校に連れて行くって駄々こねる子供と母親だからね。

私が断ったせいか、尊はしょんぼりしている。

そんな可愛い顔してもダメなものはダメ。

「早く仕事、行きなよ?」

「…すぐ終わらせて帰る」

そう言い残して楽と仕事へ向かって行った。

2人のいなくなった部屋は、何だか寂しいような。

うーん、でもくつろげるって考えればいいのか。






< 37 / 174 >

この作品をシェア

pagetop