真愛
「どうやら、俺を聖藍の頭のヤツと勘違いするらしい。誰なのか見分けがつかないほどに」
優しく奈々ちゃんを寝かせると、奈々ちゃんの瞳から一筋の雫が伝う。
「りゅ、う………」
そう呟く奈々ちゃんを、悲しそうに愛しげに見つめる尊。
「…やめなよ、そんな子。尊がもたないよ」
「楽、お前2度とその言葉口にするな。次いったら殺す」
「でも……!!」
「俺は、今すぐどうこうしようとか思ってねぇよ。まずは奈々が少しでもうなされる回数を減らしてぇんだ」
「何でそこまでして……」
「俺は、奈々を愛してるからだ」
唇を噛んで俯く。
わかってる、わかってるんだ、奈々ちゃんは悪くない。
悪いのはトラウマを植え付けた聖藍。
でも、うなされるせいで尊は寝ていないはずだ。
いつまたこんな状態になるかわからない。
眠りは浅いに違いない。
「俺はコイツに…助けられたんだよ」
まるで壊れ物を扱うように奈々ちゃんの頭を撫でる。
「次は俺が助ける番なんだよ」
そういえば、奈々ちゃんを好きになった理由、ちゃんとは知らない。
どんだけ聞いてもはぐらかされるし。
「尊は何で奈々ちゃんなの?女なんて利用するだけの冷酷なやつだったのに」
「…明日。明日、本家にこいつを連れて行く。親父とお袋に紹介する」
「また急なことを…。で、何で奈々ちゃんなのかっていう理由と何の関係が?」
「その時に話す。今は黙ってろ」
そういって、優しく奈々ちゃんの髪をすく。
愛おしそうに優しく、優しく。
こんな尊は本当に初めてだ。
猛獣使い、だね。
なら、明日。
俺はこの子を見極めることにしよう。
尊が傍に置くに値するか、をね。