真愛
本家。
「ん……?」
目が覚めると、私は尊に膝枕されていた。
しかも、よく見ると車内。
……状況がわからない。
「目が覚めたか。気分が悪かったりしないか?」
「悪く、ない…。どこに向かってるの?」
「俺の会社」
「はい!?」
さらっといったけど、仕事に同行させてるってこと?
え、一緒に行ってもいいものなの?
仕事の邪魔になると嫌なんだけどなぁ。
「仕事に同行していいの?行く必要ないよ?私、何も出来ないし」
「俺にメリットがある。仕事がはかどる、以上」
根拠がないよ、根拠が。
でももう車に乗っちゃったし、降りれないけどさ。
「尊は四六時中奈々ちゃんといないと気が済まないんだって」
ケラケラ笑いながら軽くバカにする。
楽ってほんとに鋼のメンタル。
「黙れ。不快だ」
そういって運転席のシートを蹴り上げる。
暴力いけないよ、うん。
「ついたよ〜!ここが俺たちの職場♪」
降りてみると、そこには見上げるほど大きなビル。
ほんとに立派。
こんな会社を一代で、しかもまだまだ若いのに創り上げたのね。
尊敬しちゃう。
「行くぞ」
そういって私の腰に手を回し、寄り添うようにして歩く。
何だろう、視線が痛い。
ビルに入ると、その視線はさらに集まる。
特に女の嫉妬の視線が。
あー、メラメラと炎が燃え上がってるような。
うーん、女ってやっぱり怖い。
「あ、おはようございます、社長っ!誰です?その女?妹さんー?」
そういって私の耳元で囁いた。
「あんたみたいなブスで幼児体型な小娘より、私の方が魅力的よ。どうせすぐ飽きられるわよ」
そういってにこやかに笑った。
じゃあ遠慮なく私も返答しなきゃね?
ニッコリと笑ってこういってあげた。
「私、まだまだ10代の小娘なので大人の色気なんか兼ね備えてないですからね。ケバイ化粧もドギツイ香水も私は受け付けなくて…。それと…」
1歩その女の人に歩み寄り、続ける。
「作り笑いと無駄なイヤミをいう暇があるなら、尊の仕事の役に立った方がよろしいかと思います」
そういうと、ひどく顔を歪めた。
今にも泣き出しそうな顔で走ってその場を去っていった。
「泣くなら喧嘩売らなければいいのに」
「くっ…」
後ろを振り向くと、笑いをこらえてる尊と楽がいた。
なに笑ってんの。