真愛
「社長の仕事が終わるまで、こちらでお座りになっていて下さい」
そういってソファへ座ることを勧める。
ソファは思ったよりもふかふかで、高級感があった。
さすが尊。
選ぶものも上級ですね。
「コーヒーと紅茶がございますがどちらになさいますか?」
「じゃあ…紅茶をお願いします」
本当は紅茶なんてあまり好きじゃないけれど。
でも蒼聖さんのお気遣いを無駄にはできないし。
しばらくすると、紅茶とショートケーキが運ばれてきた。
ショートケーキに乗っている苺がツヤツヤですごく美味しそう。
向かいに蒼聖さんが座り、私の後ろに楽が立っている。
後ろに人が立たれると落ち着かないけど、私の隣に座ると殺されるからね。
「奈々さんのことは、社長から…いえ、若からよく聞いています。聖藍との間に、何があったのかも」
私の顔が無意識に歪む。
あの日のことが頭の中で流れる。
「思い出させてしまい、申し訳ありません。情報を取り扱っている以上、身内の事細かな話まで入ってくるので…。ですが、思い出させたくていったわけではございません」
真剣に私と目線を合わせて、口を開く。
「気を張らないで、何でもご相談していいんです。過去を明かす恐怖や不安に駆られないように、と思いまして」
蒼聖さんなりの優しさに泣きたくなった。
なんでこの人達は私なんかに優しく出来るの?
なんで軽蔑しないでいてくれるの?
優しすぎるよ、みんな。
「……ありがとう、ございます。ほんとに」
「いえ!何か知りたい情報でもいいんです!お話してくれれば力になりますから」
優しく微笑んでくれる。
みんなの温かさが枯れた心に染みて…。
ありがとう、が溢れてくる。