真愛
「ねぇ、ほんとに本家に行くの?」
「あぁ。お前を親父とお袋に紹介する」
「いやいやいや、何で?かくまってもらってるだけでしょ?」
「俺が紹介したいだけ。やっと見つけた…大切な女だからな」
その言葉に不覚にも胸が高鳴った。
あっそ、なんていって目をそらしてしまった。
何で私を好きになってくれたんだろう。
ほんとに不思議。
私なんかよりもいい子たくさんいるし。
…汚れてない子だって、いる。
そうこう考えている内に本家についてしまった。
…私は、マンションから出てった方がいいかな。
きっと、もっともっといい人がいるし。
「奈々、緊張してんのか?」
「え?」
「顔が強ばってる。心配すんな、そんな緊張する必要ねぇよ」
優しく頭を撫で、私を引き寄せて寄り添って歩く。
柑橘系の香りに包まれ、緊張や考え事も消える。
安心、する。
廊下を歩く尊の足がある襖(ふすま)の前で止まる。
「俺だ。入るぞ」
そういってその座敷に足を踏み入れる。
奥の方には着物に身を包んだ男女がいた。
黒髪を後ろへ流し、鋭い目つきをした男の人。
その横で寄り添うように座る、微笑みを浮かべる女性。
口元がどことなく尊に似ている。
上に立つ者としての風格が2人から伺える。
ゴクリ、と唾を飲み緊張をほぐすように努力する。
「久し振りだな、尊。腰を下ろせ」
そういわれて、男の人の向かい側に座る。
もちろん私は女性の向かい。
めちゃくちゃ緊張するんですけど!?
「それで、今日は何の用だ?」
「あら、そこの可愛いお嬢さんは?」
ニコリと笑って聞いてくる女性。