真愛



「それで、奈々ちゃんは?どうしたい?すまないが、聖藍とのことは蒼聖から聞いている。もしも望まないのなら、無理に婚約をする必要はない」

「おい、何言ってんだよ、親父」

「ただでさえ男や人間と接するのを恐れてる。無理に話を進めたら、この子が幸せになれないだろう。それに、お前に全てを決定する権利はない。決めるのは奈々ちゃんだ」

「……ちっ」

私はおずおずと声を発した。

「あ、あの……私、婚約するべきかは、正直わかりません。こんな私が尊に見合う女なのか…不安なのもあります。けれど私は…尊が私を必要としてくれるなら、側に居たいと思います」

私はそっと、尊の手に自分の手を重ね握り締める。

不安気な尊。

あぁ、こんな姿も愛おしいと思うなんて。

相当重症ね。

「私、あの日聖藍に追われて…刺されました。もう死ぬんだと諦めた時、尊が助けてくれたんです。自分の家にかくまってくれました。毎日うなされて、暴れ狂う私をずっと抱き締めてくれました。こんなに汚れてる私を、尊は真っ直ぐに愛してくれました。だから……」

尊のいってくれた言葉や表情を思い出す。

すると自然に頬が緩むのを感じた。

「私も、それに応えたいんです。全てを包んでくれた尊を。尊の過去も今も全て受け止めて、愛したいんです。何者からも守るといってくれた尊を…信じたいんです」

「ねぇ、奈々ちゃん?」

ずっと沈黙を貫いてきた椿さんが突然口を開く。

「は、はい」

「……抱き締めていいかしら!?」

「え!?」

突然、想像もしてないことを言われて驚いた。

椿さんはキラキラした目で私を見つめている。

手が…抱きつきたくてうずうずしてる…。





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