真愛
「ダメだ」
「なんでよっ!!」
キッパリと断る尊と頬を膨らませる椿さん。
「本当にいいのか?奈々ちゃん」
「はい。尊は私の…たった1つの光ですから」
やっと、見つけたの。
この感情に名前をつけるなら、きっと恋。
こんなに誰かを大切に思える日がくるなんて。
自分でも思ってなかった。
「そうか。君なら…尊を任せられる。おい尊」
「何だよ」
不機嫌そうに返す。
「奈々ちゃんを、守れるのか?」
尊はニヤッと笑って、余裕の笑みで答える。
「守り抜いてやるよ。俺はアンタの息子だぞ?惚れた女は命を懸けて守る」
「いうようになったじゃねぇか」
くっくっく、と尊と同じ笑い方をする。
やっぱり親子だ……。
笑った顔が尊にそっくりだった。
「女心もわからないバカだけど、よろしくね?奈々ちゃん」
「バカは余計だろ」
すぐ不機嫌な顔に戻る。
ほんとに子供ねぇ。
「奈々」
「ん?」
「…やっと、いってくれたな、お前の気持ち」
嬉しそうに微笑んで私を優しく抱き締めた。
私も尊の背中に手を回し、抱き締める。
やっと自分の気持ちに気づけた。
「尊が……」
「「笑ってる……」」
え、親にまでいわれるくらい表情筋使ってないの?
逆に尊敬しちゃうかも。
「尊ってほんとに笑わないのね」
「お前だから、俺は笑顔になれる」
「…ふふ。うん、私も」
しばらくの間4人で色んな話をして笑っていた。
「ふっ、ほんと変な子」
楽は縁側に座り、空を見上げながら呟いた。
「でも……うん、気に入っちゃった♪」
もう1人、奈々の虜になった者がいることを、誰も知らない。