真愛



いつものように一度家へ帰り、溜まり場である倉庫へ向かう途中だった。

後ろから迫る人影に気づけてなかった。

足音が気になって振り向いた瞬間、頭を何かで思い切り殴られた。

薄れる意識の中、その男がニヤッと笑った。

「あんた……は…」

そこで私の意識は途絶えた。




「ん……?」

目を開けるとそこは、小さな倉庫だった。

窓もなく、薄暗い光だけの寂れた倉庫。

「やっとお目覚めか、聖藍のお姫サマ?」

薄気味悪くニヤリと笑う赤髪の男。

前に一度見たことのある顔だった。

ずいぶん前だけど、聖藍と抗争が起きた暴走族kudan(くだん)の総長。

よく、覚えてる。

返り討ちにされて、動けなくなってもなお、聖藍を憎しみがこもった瞳で睨みつけていたから。

「kudanの総長が私に何の用?抗争に負けた腹いせに私を拉致したとか?」

「まぁ、それも理由ではあるけど、もーっといいこと思いついたんだよ」

不気味な笑みを浮かべ、言葉を紡ぐ。

「お前を使って、聖藍を潰す。お前に裏切りの罪をきせてな」

意味がわからなかった。

私を拉致した所で、返り討ちにされることは目に見えている。

私に裏切りの罪?

「私を拉致したところで返り討ちにされることなんてわかってるでしょ」

「拉致だけ、ならな。でも……聖藍の姫がkudanの内通者だと疑われれば話は違ってくる」

余裕の笑みを浮かべ、私を見据える。







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