真愛




「私が、聖藍とのことを片付けない限り、心から尊と繋がることはないと思うんです。だから、ちゃんとケリをつけたら…2人のことを親と思っていいですか…?」

恐る恐る顔色を伺いいう。

しばらくの沈黙の後、椿さんが突然抱きついてきた。

当然、私は戸惑った。

「え、つ、椿さ…ん?」

「もう、やっぱりいい子!!さすが尊の選んだ子ね!」

そういって更に抱きしめる力を強める。

く、苦しい……。

「俺たちもできる限りのことはしようと思う。早く過去の呪縛を解いてほしいこともあるが…何より早くお父さんと呼ばれたい」

緩みきった顔でいう司さん。

うん、やっぱり緩みきった顔はお父さん譲りなんだね、尊。

すっごく似てるよ、そっくりさん。

「でも、無理しちゃダメよ?辛い時はたくさん頼りなさい!」

あまりにも笑顔でいうもんだから、こっちまで笑顔になる。

こんなに優しいご両親をもったから、優しい尊がいるんだね。

たくさん愛されて育ったんだね。

そう思ったら、なんだか嬉しくなった。

温かい家族だな。

「うーーんっ!やっぱり奈々大好きよ!!」

そういってまた抱き締めてきた、その時。

座敷の戸が開いて、愛しい人の姿が現れた。

「何してんだ、お袋」

「あら、おかえり尊〜」

ゆったりとした声でおかえりの挨拶。

尊の額にどんどん血管が浮き出てくる。

……ヤキモチ?

「今すぐ奈々から離れろ」

「やだわよ、抱きつき足りない〜っ!」

頬をグリグリ押し付けてくる椿さん。

見た目によらずほんとに女の子。

意外と子供っぽいとこもあって。

ふふ、そういう所が似てるわね?






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