真愛



「離れろっていってるだろ」

私を引き寄せ無理やり椿さんから引き剥がす。

ぷくっと頬を膨らませる椿さん。

「奈々のことになるとケチよね、尊って」

「ケチも何もあるか。お前もホイホイ抱きつかれるな」

「えー、私のせい?」

くすくすと笑ってみせる。

拗ねながらも大切そうに抱きしめてくれる。

こんなに幸せでいいのかな?

「マンションへ帰るぞ」

「あら、もう行っちゃうの?奈々ともっと話したいわ」

「ベタベタされたら俺が困る」

「ヤキモチやきなのね?まだまだ子供ね♪」

舌打ちをついて私の手を引きさっさと座敷を出てしまった。

もうちょっと話したかったけれど仕方ない。

また今度お邪魔しよう。

雪乃にお別れをいって本家を出た。

ちょっと寂しいけれど、またすぐ会えるしいいよね?

何より、尊がいるから。

「あ、ちょっと繁華街に寄ってもいい?」

「何だ?何か用でもあるのか?」

繁華街という単語に顔を強ばらせる尊。

繁華街となると、聖藍が絡みついてる。

頻繁に出入りしてるらしい。

蒼聖さん情報だから、確かだと思う。

「私がよく寝泊まりしてたお店に行きたいの」

「もしかしてRady(レディー)のことか?」

「知ってるの?」

フッ、と笑って驚きの一言を放った。

「あそこ、俺が経営してるんだぞ?」

「はい?」

寝泊まり、飲食自由で過ごしやすかった。

どんな金持ちが経営してるのかと思ったら。

まさかの尊のお店だったのね。

「じゃなきゃどっかのシスコンが出入り許さねぇだろ」

「シスコンとは何だよ、シスコンとは!」

俺は妹思いなだけです〜、なんていってるけど。

いや、ばりばりシスコンですよ。

どっからどー見ても。





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