真愛



「久々に行きたいの。ダメ?」

「聖藍に見つかったらどうする」

「尊が守ってくれるんでしょう?」

意地悪く笑って首を傾げてみる。

少しの沈黙の後、深い溜息を吐く。

「俺はお前に弱いみたいだ。楽、Radyに向かえ」

「ふふ、ありがとう」

しばらく車を走らせると、すぐにRadyの近くに到着した。

「近くで停めて?」

「いや、店の前まで行く」

「バカなの?突然オーナーが来てもみんなビックリするでしょ?ただでさえ目立つんだから」

「こればかりは譲れん」

「目立つの嫌なの。面倒くさいの。すぐ戻るから」

「……すぐだからな」

「うん、約束」

小指と小指を結び、指切りをする。

頬にキスをして、車を出る。

Radyまでは5分程でつくし、見つかった時はRadyに逃げ込もう。

きっとかくまってくれる。

そんなことを考えながらのんきに歩いていた。

ーーーその時だった。

背後から誰かに捕まり、口元をハンカチで押さえ付けられる。

薄れる意識の中、確かに香る


ーーーーースカルプチャー。

迂闊(うかつ)だった。

気を付けるよう言われてたのに。

ごめんね、尊……。






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