真愛
「ん…………」
目を開けると、そこには見慣れた景色が広がっていた。
今でも夢に見る……あの倉庫。
一瞬夢か現実かわからなくなった。
夢?現実?どっちなの?
「目が覚めましたか」
そこにはいつもの悠月がいた。
汚いものを見るような瞳ではない。
あの頃の悠月。
「何で…」
「すまないな、少し手荒な真似した」
後ろを振り向くと、銀髪…瀧の姿。
そしてその後ろには颯や蓮、瑠依の姿があった。
手が、足が小刻みに震える。
抑えようとしても抑えきれない。
声が震え、喉がつっかえる。
あの日が脳裏に蘇る。
「すまなかった。俺ら目が覚めたんだ…やっと」
何をいってるの?
誰からどう何を聞いたの?
なぜ私を……もう1度ここに連れてきたの?
「本当は…裏切ってなんかなかったんだな」
悲しげな目をする瀧。
「…なに、よ…今更」
「あぁ、今更だ。やっと、わかったんだ。kudanから全て聞いた。お前がどれだけ苦しんだか…俺らがしたことは悔やんでも悔やみきれない」
「信じてたから…ショックだったんだ」
俯いてそう呟く蓮。
無意識に乾いた笑いがこぼれる。
「ショックだった?だから何してもいいって?殴って、蹴って、痛めつけて、人を刺してもいいって?」
「それ、は……っ!!」
「甘すぎるよ、あんた達。私がどれだけ…」
そこまでいった時。
私はスカルプチャーの香りに包まれた。
瀧の腕の中にいると気付いたと共に、吐き気と嫌悪感に襲われる。
「いやっ、やめて、離してっ…!!!」
「ごめん、ごめんな奈々…俺は奈々を愛してるんだ」
ーーーー『お前はもういらない』
瀧の言葉があの日と重なって聞こえる。
「いやぁぁぁぁあああぁっ……!!!!」
夢でうなされた時のように暴れる。
やめて、触らないで。
また私を殴るの?
また私は……蔑まれるの…?
あんな苦しい思いをするの……?