真愛
拳を震わせ、鬼の形相を浮かべる。
私はそれをただ呆然と見ていた。
「あんな尊…初めて見た」
楽がボソッと呟く。
ごめんね、そんなに怒らせちゃって。
私が迂闊に捕まるからだね。
こんな状況でも冷静に頭は働く。
止めようにも、体はいうことを聞いてくれない。
「テメーら、ほんとにわかってんのか?奈々がkudanに何をされたか。わかってねぇよなぁ、そうやって軽々しく言葉を吐けるなら!!!」
「どういう、ことスか…」
震えた声で颯は聞いた。
尊が口を開く前に、私の口が勝手に開いた。
「犯されたの、私」
自分でも驚いた。
自分が薄い笑みを浮かべていることに。
「kudanになんて聞いたか知らないけれど。どうせ殴ったとかそういう話でしょ?本当はね、あの倉庫で1週間。寝る暇も与えられず、ずーーっと犯されてたんだよ」
そういった時のみんなの顔が面白くて、更に言葉を続けた。
「みんなの弱味を握られてね?それをネタに脅されて。私が黙って犯されてれば危害を加えない、なんて不確かな条件を飲んだの。倉庫に帰って安心した。みんなに傷一つなくて。そしたら……みんななんていったと思う?いってごらんよ、自分の口から」
いたずらっ子のような笑みを浮かべ、みんなに問う。
それぞれ悔しがな表情を浮かべ俯く。
そんな顔してもはもう遅いのにねぇ?
「“汚い”“いらない”そういったんだっけぇ?私の言葉も信じず、結果的にkudanの手に落ちて。どれだけ過ちを繰り返せば気が済むのかしら?あぁ、それともそれも理解できない能無し?」
目の前が黒に染まる。
自分が自分じゃないみたい。
これは誰が話してるの?
ほんとに私が話してる?
「仲間を信じなかった。その時点でお前らは腐ってたんだよ。そんなもんだよ、お前らの絆なんて。尊が私を助けてなきゃ、何も知らずに生きていけただろうに、可哀想ねぇ?」
くすくす笑う私。
私なのかもわからない女が笑う。
止めたくても、黒に染まった私は止まらない。
「まぁ、どんなに願っても過去は戻らない。あんた達がしたことも。よく夢に出てくるのよ?あの日がずーっと繰り返されて。ふふ、おかしいわよねぇ?あの頃の思い出は幻想だったのね」
「違う!!俺達は本当に…!!」
蓮の言葉を遮り、冷たく言い放つ。
「仲間のことを信じないあんたらに、何を言われても響かないよ?」
綺麗な作り笑いを浮かべ、首を傾げる。
自分でも気味が悪い。