真愛



「私を罵ったその口でよく平然と喋れるよね?苦しんだ?悩んだ?私の方が苦しみを味わって生きてきたわ。やっと見つけた光だった。それが簡単に崩れるなんてね。まぁ、今更謝れとも言わないよ」

だから……そして最後の言葉を紡ぐ。

「もう関わらないで?」

みんなが息を飲んだのがわかった。

どんな顔してるんだろう、私。

何をいってるんだろう?

「それぐらいにしとけ、奈々。あとは俺が済ませる。だから、今は少し休んどけ」

そういって私を抱きしめる。

段々と視界がクリアになっていく。

黒が目の前から消えていく。

正気に戻っていく。

「お前らは、何がしたい?謝って今まで通り仲直りか?」

「できるなら……聖藍に戻ってきて欲しい」

言葉をつまらせながら瀧がいう。

そんなこと、無理だとわかってるはずなのに。

「ほんとに頭スカスカだな。毎晩うなされて暴れるほどトラウマを抱えてるんだ。無理に決まってるだろ。その足りねぇ頭で考えろ」

「なっちゃん…ごめん、僕がこうなる前に止めるべきだった。なっちゃんを…信じればよかった」

静かに涙を流しながら頭を下げる瑠依。

きっと、この中で1番罪悪感に苛(さいな)まれてるのは…瑠依。

気づけていたはずなのに。

止めれるかもしれなかったのに。

その気持ちが瑠依を苦しめてる。

「瑠依だけの問題じゃないでしょう?これは聖藍全体の責任」

「なっ、ちゃ……」

「瑠依も、苦しんだんだよね」

もう……みんなを呪縛から解き放たなきゃ。

私も…過去に縛られてちゃ前を向けない。

それはきっと……みんなも一緒。

もちろん、尊だって。

私の過去を片付けなきゃ、尊と笑えないものね。





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