真愛




どの男との間に生まれた子かわからない私。

そんな私が邪魔なんだろう。

それでも別によかった。

お金には困ってなかった。

たまに母の財布からお金をくすねて、それでお金を買う。

毎日のようにお金が入る母は、お金がなくなったって気づかないから。

それでしか、日々を食い繋げなかった。

私はボロボロの体を引きずって近くにある公園へ向かった。

何かあればよくここに足を運んでいた。

そこだけが私の居場所だった。

「今日も来てたんだ?」

振り向くと、1人の少年がいた。

彼は私が公園に行くたびに話しかけてくる変わった少年。

普通ならこんなボロボロの子供に話しかける人なんていない。

けれど、彼だけは違った。

怪我をした私を毎回手当してくれる。

「僕に手当してもらいたくてわざとやってる?」

「…違うよ」

できればこんな傷、つくりたくない。

けど殴られるんだもの、仕方がない。

前に名前を聞いたけれど、教えてくれなかった。

私が大きくなった頃に教える、らしい。

名前の代わりにと、年だけは教えてもらった。

私より10は上らしい。

その頃にはきっと、私は忘れられてるんだろうなとか幼い頭で考えた。

物心ついた時から冷めた少女だったから。

人間なんて、信用してなかった。

どれだけ助けを求めても、何もしてくれない大人。

学校では汚いといじめられる日々。

世界に絶望していた。

「ねぇ、お兄ちゃんはこの世界好き?」

「んー、そうだなぁ…どうだろうね?まぁ、人の道理から外れた僕には丁度いい世界なんじゃない?」

「…なにそれ。難しい言葉なんかわかんない」

「君も大きくなればわかるさ。この世界がどれだけ腐ってるのか…僕がどれだけ腐った人間なのか、ね」

悲しげに微笑み、私の頭を撫でる。

なんで彼がそんなに悲しそうな顔をするのかわからなかった。

そしてその内…彼は公園には来なくなった。

少しの間の幻想も、それはただの幻だった。

わずかな心のよりどころは、案外簡単に崩れた。





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