真愛
「確かに、噂がまわると組に対して不信感を抱くものは増える。それを利用して嘘をいってまわるやつも増えるな。場合によっちゃ抗争にまで発展しかねない」
「尊、お前っ…!!」
冷静に答えた。
やっぱり、私がいることで良からぬことが起きかねないのだろう。
それは組にとっても、次期組長の尊にとっても不利なこと。
私がいなければ……。
「そうなれば組は相当な深手を負うだろうな。組にとってもそれは避けたいだろう」
「…なら、すて……」
「でもな」
私の言葉にかぶせるように尊は話す。
「それでも俺はお前しかいねぇ。周りがなんと言おうとな。そんな情報、いくらでも揉み消す。お前を悲しませるやつは俺が消す。だからお前は変わらず俺のそばにいろ。お前がいないと、俺が無理なんだ」
そういって窓の外を見ていた私を無理やり振り向かせる。
「そばに居るだけでいいんだ。ただ隣で笑ってろ。汚い?汚れてる?俺だって人に言えないようなこと山ほどしてきた。汚れてるもん同士なら、何も怖くねぇだろ。だからもう、そんなこと言うんじゃねぇぞ」
微笑んで私の頭を撫でる。
ねぇ、何でそんなに……。
嬉しくて目に涙がたまる。
そうやっていってくれる人、今までいなかったよ?
ごめんね、ありがとう……。
泣いてるところを見られたくなくて、尊の胸に顔をうずめる。
どうした?ってからかうような声でいう所すらも愛おしい。
この愛を手放したくないと思う程に。
「私だって、尊がいなきゃ生きていけない」
「ふっ、そうか」
優しく抱きしめ、頬にキスをする尊。
ありがとう、私を見つけてくれて。
私は泣き疲れていつの間にか眠りに落ちてしまった。