真愛
もう1人の兄妹。
雪乃side
ふわふわとした浮遊感。
現実感がない世界に私はいた。
「ここ…どこ?」
そこにはごく普通の町並みが広がっていた。
どこか知らないはずなのに…何だか懐かしい。
そんな不思議な感覚に襲われていた。
「どこかで…」
「あーーー!みーつけたっ!!」
その大きな声に驚いて振り返る。
すると、見覚えのある小さな子供の姿があった。
「わ、たし……?」
その姿は紛れもなく、幼い頃の自分だった。
「つーかまーえたっ!!」
そういって抱きついてきたと思ったら、私の体をすり抜け、私の背後の方に走っていった。
そこには今よりも少し幼さが残った楽兄の姿。
これは私の幼い頃の記憶…?
だとしたらもしかしてっ……!!
そう思った時だった。
「あら、雪乃と楽は本当に仲良しね?」
そういってミルクティー色の髪をサラサラと揺らしクスクス笑う…私のお姉ちゃん。
「ヒナ姉っ……!!!!」
目を覚ますとそこは、いつもの本家だった。
「夢…だよね、そりゃ……」
だってヒナ姉はあの日…。
ポタポタと布団に広がるシミ。
それが自分の涙だと気づき、拭う。
それでも止めどなく流れる涙。
ヒナ、姉……。
「また泣いてんのか、ヒヨ」
「!! …楽兄、その呼び方やめてよ」
「ヒナの事を思い出すからか?」
そういわれ、私は黙ってしまう。
“ヒヨ”というあだ名は他の誰でもない、ヒナ姉がつけてくれた。
あの頃は少しでもヒナ姉と同じものが欲しくて、名前までヒナ姉とおそろいにしたいと泣いていたっけ。
いつまでもなく私をあやしてくれたのはいつもヒナ姉で。