真愛
何回かヒナ姉と一緒に倉庫へ行ったことがあるから、道は覚えていて。
倉庫が見えて、やっと会えると思って、私は倉庫へと飛び込んだ。
でも、そこに仲が良かったヒナ姉と彼氏の姿はなく、あったのは涙を流すヒナ姉の姿。
ヒナ姉が泣いているのにも関わらず、聖藍の頭は冷たい目で見ている。
私は我慢ならなくて、2人の間に割って入った。
「喧嘩しないでっ!!」
「雪乃…!!どうして……」
「ヒナ姉泣いてるよ!?何したの!?」
叫びながら訴えると、変わらず冷めた目でその人は言葉を放った。
「小娘には関係ないな。出ていけ邪魔だ」
「ヒナ姉に謝って!謝るまで帰らないから!!」
「雪乃、いいの!私が悪いの…!」
「なんで!?ヒナ姉が泣いて、この人が謝らないなんておかしいよ!!」
私はなおも吠える。
少しでも、ヒナ姉の力になりたかった。
「もういい!!話になんない!こんな奴と話すだけ無駄っ!!」
ヒナ姉帰ろう、と手を取ったその時だった。
「雪乃っ!!危ない!!!」
気づいた時にはもう遅くて。
ヒナ姉は私をかばった。
倒れたヒナ姉を支えると、ぬるりとした感触があった。
恐る恐る手を見ると…真っ赤に染まっていた。
よく見るとヒナ姉のお腹にはナイフが深く刺さっていた。
「ヒナ……ね、え…?」
額には冷や汗をかいている。
私はどうしたらいいのか分からなかった。
「ヒナ姉っ、ヒナ姉っっ……!!!」
「ふ、ふ…聞こえてる、わよ…?そんな、に…大きな声…だしちゃ、だ、め…」
「だってヒナ姉っ…!!」
「いい、の…。大切な妹…まも、れた…。それだ、けで…じゅ、ぶん……よ…」
そういって力なく笑った。
そんな姿が本当に儚くて、消えそうで。
一層涙の粒が大きくなる。
それは私の頬を伝い、ヒナ姉の頬に落ちる。
「ふふ…これじゃ、どっち、が…泣いてるか……わかんないわね…?」