真愛
「覚えてるよ、何もかも。今も鮮明に思い出せる。あの日、私があそこにいなければ…死なずに済んだはずなの。死ぬはずだったのは…私だったのに…!!」
あの日から1度だって忘れたことは無い。
買い物をしてても、ご飯を食べてても浮かぶのはヒナ姉。
私にとってヒナ姉の存在は大きすぎた。
毎日謝り続けている。
私をかばって死んだヒナ姉。
まだまだ未来があったはずなのに。
その未来を…奪ったのは私。
「私がいなければ、よかったのにね」
「それは違う」
「え?」
楽兄は真剣な顔をして、私を見つめる。
こんなに真剣な顔、見たことない。
いつもはおちゃらけてる楽兄が本気の顔をしてる。
「ヒナは、お前を大切に思ってた。守れなかった方が後悔していたはずだ。だから、胸を張れ。ヒナが繋いだ命を…いなけれはよかったなんて否定するな」
そういって私をやさしく抱きしめてくれた。
「が、くに、い……楽兄ぃぃ…っ!!」
ヒナ姉、ヒナ姉、ヒナ姉……。
ごめんね、未来を奪って。
そして…命を繋いでくれて、ありがとう。
私はヒナ姉が繋いだこの命を大切にする。
ヒナ姉の分まで、強く生きるよ。
絶対、幸せになるからね。
だって私には、ヒナ姉と同じくらい大切な人がいるんだから。
もう2度と繰り返さない。
強く、なるよ。
だから、変わらず隣で見守っててね、ヒナ姉。
もう、見失わない。
涙を拭って、前を向くんだ。
「ありがとう、ヒナ姉」